囃子の練習を終えた後いつもの居酒屋で歓談して家路につく時、通りかかった藪のそばに風車が並んでいた。

開山祭に合わせて行われる花回廊で、花とともに並べる物らしい。

各小学校の生徒のメッセージが書かれた物がずらっと並んでいる。



風車に息を吹きかけて回していたら、うなり声とともに子猫が顔を出した。

黒トラのなかなか器量の良い子猫だ。

捨て猫なら拾って帰ろうかと思ったら、うなり声を上げ飛びかかる仕草で威嚇してくる。

なかなか気性が激しいようだ。



我が家には17才になる老猫がいる。若い時にはおてんばで、活発に駆け回っていた物だが、それが元で事故に遭い後足を失った。

あと3年も生きれば妖怪ネコマタになるらしいが、年のせいか最近は寝ていることが多い。

かなりのストレスを与えそうで、一緒には飼えないなとそのままにして家に帰った。

家人に話したところ、やはり賛否は見事に分かれたので、明日まだ拾われていないようなら拾ってこようと決めた。



翌日、囃子の練習を終えて居酒屋に向かう際昨日の場所を覗いたが、子猫の姿はない。

人通りも多いし誰かに拾われたのだろうと安堵した。

歓談の後帰路につく際に昨日の風車のところで、仲間に昨日の子猫のことを話しているとどこかで子猫の鳴く声が聞こえる。あたりを探してみると植え込みの中で2匹の猫を見つけた。でも、昨日見た黒トラではない。赤トラと全身グレーの子猫だ。呼んでも出てこないが逃げる訳でもない。

居酒屋の女将さんが外に出てきたので訳を話したところ、刺身とつくねの残りを持ってきてくれ、茂みの中に置くとがつがつと食べ出した。

そのうちに昨日見た黒トラが顔を出した。どうやら3匹の子猫は兄弟のようだ。

女将さんが言うにはこのあたりでよく見かける野良猫によく似ているらしく、その野良猫の子供たちではないかとのこと。この植え込みの中で育った物だろうか。



そういえば人に甘えず威嚇してくる所は、野良だからなのかもしれないと納得。

しかし植え込みの中とはいえ雨の日もあるし、梅雨寒の日もある。

何とか無事に育って欲しい物だ。



今夜は燈回廊が行われる。

多くの人出が予想されるが、子猫たちが驚かされなければいいのだが。