手術は2月9日。

朝から食事はなく点滴がそれに代わる。

手術着に着替え、手術室入りは9時15分。点滴スタンドを押しながらの入室。

「昨日は眠れましたか?」と尋ねられたが、前日はすることもなく昼間からベッドでうとうとしていたので、夜はぐっすりとは行かなかったな。

麻酔を脊椎に注射する際、尻にビビッと痛みが走った。神経に障ったらしい。

麻酔が効くと触る感じはしても痛みや熱さ冷たさは感じないとのこと。 麻酔が効いたのを確かめて、やがて手術が始まった。

 

見えても気にはならないのだが、不安を抱いてもということか首のあたりに布を垂らした目隠しをされてしまった。多分見えてもそれが原因で気持ちが悪くなることもなかっただろう。できれば自分で写真を撮りたいぐらいだったのだが、言えるわけがない。でも手術灯のライトのガラスに映るのが見えていたので、じっとそれを見ていた。

「見えますか?」と聞かれたので、「ガラスに映ってるので」と返事。「大丈夫ですか?」には「大丈夫です。」と答えた。

見えるとは言っても範囲は限られるし、映りも小さい。おまけに眼鏡を外しているのでぼんやりとだ。

 

手術で内臓を引っ張られる感じが強いと思ったら急に気分が悪くなった。

「大丈夫ですか!」と看護師さんが声をかける。急に血圧が下がり、顔色が青ざめたのが判ったのだろう。

「迷走神経のショックか」男性看護師がつぶやいた。

薬剤が投与され血圧は徐々に上がってきたが、脳貧血のような低血圧の気持ち悪さは最後まで抜けなかった。

 

手術が終わってもなかなか血圧は正常値にまで上がらず、その間はやっぱり気持ちが悪かった。 その後、血圧を測りながら麻酔がどれだけ覚めたかを繰り返しテストした。 血の気が通常の状態に戻ってきたのは夕刻の事。 麻酔が覚めて歩けるようになり、血栓予防のきついストッキングをようやく脱ぐことが出来た。

まだ食事どころか水もダメ。夕食が配られるのを聴きながら、寝入ってしまった。

検温で目が覚めたのが9時。熱が37.6度あったので点滴に痛み止め(熱冷まし)が加わった。

 

退院前日の夜まで、点滴のチューブは外れることもなく常に点滴液が交換され、抗生剤も何度か点滴に加わった。 トイレに行くにも、点滴スタンドといつも一緒だった。

嫌だったのは血液の逆流だ。トイレに行って帰るとチューブの中に血液が逆流している。看護師さんに戻してもらったのだが、これが3回もおこるとトイレに出歩く気もしなくなる。よくよく考えると追加の点滴が終わる頃トイレに行くとこの逆流が起こっているのに気付いた。常時点滴されているもの一つなら出歩いても逆流は起きない。ようやく点滴とのつきあい方をおぼえたのは退院間際だった。

 

手術当日からは点滴が食事替わりで、当日はもちろん翌10日朝も食事はなく、ようやく食事が出たのは昼から。流動食ということで水のような重湯に味付けのかつおみそ、野菜スープの上澄みにオレンジジュースだけだったが、水分がとれるのは本当にありがたかった。

11日には五分粥、12日にようやく全粥になり、この日の昼食を最後に退院した。

 

辛かったのは手術当日ぐらい。

後は体調も戻り経過も良好だ。