滞在初日のことでした。
夕食を終えた頃外を見ると、夕陽の中を忙しくガスが通り過ぎて行きます。
山頂に長く滞在する神主さんの「御来迎が見られるかも知れない。」との言葉に、外に出てカメラを構えて待ちました。
御来迎とは高山の頂上で太陽を背にしたとき、前面の霧に自分の影が大きく映り、その周りに光環が見られる現象で、阿弥陀仏が光背を負うて来迎するのになぞらえていうのだそうで、ブロッケン現象とも呼ばれます。


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太陽を背にガスが通り過ぎて行く東には影富士は見えるものの、ガスが薄いためか自分の影も光環もいっこうに見つかりません。


そうこうしているうちに夕陽は剣が峰の向こうに沈み、向こうから越えて来るガスにうっすら虹色の予感が。

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剣が峰を越えて来るガスは瞬時に形を変え通り過ぎます。



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その濃淡や形、光りの色などをしばらく楽しんでいました。



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天女が剣が峰に口づけたその瞬間です。

剣が峰を越えてきたガスに、夕陽が稜線の影を映し出しました。それが天女の顔に見えたのです。


自分がこの稜線に居てこちらを見ていたならば、これはまさに御来迎が見えたであろうという瞬間でした。

影富士側に御来迎こそ見えなかったものの、その条件を裏側から観察出来たのは滞在初日のなんとも洒落た歓迎でした。






富士山頂滞在記 剣が峰 : へんぽらいの祭り談義